kazki//okadaの備忘録

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「少女終末旅行」つくみず

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つくみず先生の初連載?作品。全6巻。

ゆるふわなディストピアもの、と見せかけて、しっかり重みのある内容。最近ありがちな鬱展開おしまくったり過激な描写に走ったりというのではなく、さりげなく、なおかつ、根源的な問いやそれに関する考えが散りばめられている。

世界の設定がとても美しい。チトとユーリというキャラクターもすごくいい。哲学的な問いを立てる少し気は短いけど真面目なチトと根拠はないけどポジティブな意見を提示するおおらかなユーリ。この2つのキャラクターは作者の問いと希望なのでは、と感じてしまいました。でも作者は本質的にはチトなんだろうなと感じました。

最終巻に関しては、哲学者西田幾多郎の「善の研究」で論じられている主客未分についての考え方と共通するものを感じた(自分の西田解釈とつくみず解釈にはあまり自信がありませんが)。主観と客観を離れたところに真のあり方、一つの存在としての自己=世界があるのではないか、という感じの印象を最終巻のチトの台詞から感じました。梵我一如とか汎神論とか、そういった類の考え方と近いものがあるなと個人的には思います。哲学者ショーペンハウアーの主著がさりげなく登場してるところからもつくみず先生は哲学的な意図をもって作品づくりにのぞんだのではないかと思ってしまいます。

終わり方も、なんだか古い時代の日本文学を感じました。伏線を回収しきる、物語を終わらせる、結末をはっきりさせる、という終わり方ではなく、何か含みのある、ある一点を切り取った感じといいましょうか、ある心理描写を最後に描く、うーん、言葉にすると何だか言いたいことが表現できないのですが、川端康成とか三島由紀夫とか読み終わった時と似た感覚に陥りました。よく表せないけど何だか切なくて自然でちょっと物足りなさもあるけどこれ以上のものはないのだろうって感じの終わり方。よくわからん!

これまで読んだ漫画の中で一番といってもいいくらいの読後感でした。全体的に本当に素晴らしい作品でした、自分にとっては。少なくとも読み終わった直後にはそう感じる作品でした。アニメ化もしてますが原作読破がおすすめです。最後本当にいいから。

余談ですが、著者のあとがきがわりと暗くて好きです。真面目に生に向き合っている方なのかな、などと想像して、なんだか暖かい気持ちになります。

 

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