kazki//okadaの備忘録

kazki//okadaの個人的な見解やレビューなどを垂れ流します。

「幸福について―人生論 」ショーペンハウアー

f:id:kazki_okada:20200427114948j:image

哲学者ショーペンハウアーの幸福について論じた著作。

ものすごく雑にまとめれば、幸福には精神的なあり方が重要であり、所有や名誉などは揺らぎやすく際限のない虚なものである、ということである。つまり、外的要因ではなく内的要因こそ重要である、ということである。

構成としては、幸福には人のあり方、人の有するもの、人の印象の与え方、すなわち精神、所有、名誉が要素として挙げられ、精神が重要であることを述べ、その後、これまでに存在する格言の類を考察していくというもの。

概ね同意できる内容であるが個人的に新しい何かを与えてくれた印象はあまり受けなかった。再認識という形ではあるが二点ほど、なるほどと感じた部分についての自分のメモを載せておきたい。

 

一、財産について

財産そのものに価値を見出すことは虚しく際限ないものである。

現に存在する財産は不慮の事態に備える防壁とみるべきである。蓄えた財産は固定の資産とせず資本とすべきである。つまり、貯めるためではなく何かに使うための財産である。残すべきは不慮の事態に対する備えぐらいである。

二、快楽と苦痛について

「賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める」というアリストテレスの言葉をあげ、享楽や幸福が消極的否定的な性質を持ち苦痛が積極的肯定的性質があることを論じる。説明の中で「幸福は幻にすぎないが、苦痛は現実である。」というヴォルテールの言葉を挙げている。個人的には幸福、享楽、快楽の類が幻のようなものであることは同感であるが、苦痛もまた幻のようなものであるとも思う。幸福を求めず、苦痛なきを求める、ではなく、幸福も苦痛も幸福ななきも苦痛なきも求めないのがよいのではないかと思う。

 

一読の価値がある著作だと思うが、現状では自分の人生に大きな影響を与えるには至っていない。読みにくい著作ではないので哲学に興味がなくとも読みやすいと思われる。

幸福について―人生論 (新潮文庫)

幸福について―人生論 (新潮文庫)