kazki//okadaの備忘録

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「一人交換日記2」永田カビ

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永田カビさんのエッセイ漫画。一人交換日記の続きであり、現実逃避してたらボロボロになった話の前の話。暗いところにいるからこそ希望の光が見えることもあるということを思い出させてくれる作品。爽やかに力強く示される希望の光にはリアリティを感じることができなかったり、抵抗を感じてしまったり、いいなと思っても自分とは無関係の遠いところにあるものだと思ってしまったり、そうなりがちな人もいると思います。いると思います、というより自分は割とそんな風に思えてしまうことがあります。いつもじゃないけど。本作から感じられる希望の光のようなものは自己投影してしまう何かがあるように思われます。暗いところでもがき苦しんでいる時に垣間見える光のようなもの。自分の話で恐縮ですが、精神疾患で苦しんでいる時、ふとしたことが強い希望の光に感じた経験があります。人から見ればすごく大したことない出来事なのですが、当時はリアリティをもって胸に染み込んでくるような感覚になりました。普段より人の優しさに敏感になったり、天候や自然に魅力を感じたり。大げさと思われるかもしれませんが、春がくる、というだけで、きっと全てがよくなる、きっと全てがいい方向に進む、という気持ちになったり、桜が咲いているのを見るだけで涙が出てきたり。現実はもっと救いがなくて残酷で不条理なもので、それを直視していくべきで目を背けてはいけない、と思っていますが、あの感覚は忘れたくないな、と忘れかけていた今思い出すことができました。カビさんの作品は苦しんでいる人にも、苦しんだことのある人にも、これから苦しむ人にも、そうでない人にも光となり得ると思います。ただの娯楽ではありません。もらってばかりでこちらから何もできない申し訳なさは感じますが、自分は音楽で自分のできること、やりたいことをやって、人に何か与えられたらなと思いました。あとは生活すべてが人々の希望になれるような生き方にできるようにしたいとも思いました。

本作は本編のあとにチカちゃんの憂鬱という短編作品が入っているのですが、これがまたすごくいい。まず設定がすごくいい。謎の組織、世間、実在しますよ。レジスタンスであるチカちゃんとのんちゃんもすごくいい。構図とかもいい。表現として。そして、エンディング、とてもいい。これまた希望なき希望のようなものを感じる。褒めると胡散臭くなってしまうけど、改めて言うと、設定、エンディングが特に好きでした。フィクションも面白いものが描けるんだなと驚きました。そして出来れば読みたい。すごく読んでみたい。短編集とか出してくれたらすごく嬉しいな、なんて思ってしまいます。もし出してもらえたら即購入しますね。

いろいろな私的要素が入りすぎてレビュー的なものとしてはダメダメですが、興味が湧いた方はぜひ一連の作品を読んでみてください。レズ風俗から現実逃避まで全部読むと魅力がさらにわかります。