kazki//okadaの備忘録

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「栽培学批判序説」藤井平司

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栽培学についての本。

 

目先の経済、自然の複雑さを無視した自然科学、表面的な便利さ、そのようなものにとらわれて、より忙しくより貧しくなっている農家にこそ読んでもらいたい著作。

植物本来のあり方、自分の求める金に踊らされない豊かさをしっかり考えた農業を追い求めていきたいと思った。

 

以下、読者メモ。

 

栽培学批判序説

1

・愛することは守ることである。

→個人的な意見だと思われる。説得力が下がるので出さない方がいい。

・自然を守る術を理解するのは地子にしかできない。

→理解に地子かどうかは最終的には関係ないと思われる。地子が理解しやすいということには同意だが、人により理解は異なるし学習である程度は理解できるようになると思う。

・少し内容とズレた記述が時折見られる。その部分に関しては個人的な意見であることが多い。

・17pから始まるエントロピーのくだりがいまいち理解できない。

 


1のまとめ

中途半端な思考による自然科学至上主義が様々な問題を生み表面的には農業を発展させているが実際危機に追いやっている。

というニュアンスを感じた。

 


2

・生態系の破壊は各自のすみかをなくす

・農業技術は作物の個性を見て、自然均衡を前提とした方向に進むしかない

・生存の基本線。個体が生きる以上のエネルギー獲得を望まない限り他者への迷惑はかけない。

・生存の基本線をもとに収量の限界について考える。

・植物に過剰な施肥、特に糞尿施肥はクソ食らえ農法といえる。

 


2のまとめ

人間の都合のいいように捉えられた物質循環論は悪循環にすぎない。

 


3のまとめ

多様な生物がバランスをとり真の耕地生態系を形成している。害鳥や害獣もそのバランスを保つために必要な存在である。犬、猫、鳥、虫、モグラ、その他多くの生き物たち。

 


4

・病害虫への人為的対策は新たな病害虫をうむ

・作物は人間と植物のお互いの生存上の関わり合いにより変化してきたもの

・作物の生理学は全体論的に捉えることが大切

・部分を切り取り分析細分化した科学理論は現実と乖離した部分がある

・土地柄による生態系

・環境に合わせて変化する作物は生き物である

・目に見えない遺伝因子より目に見える栽培の体験を意識すべき

・地場品種は自然に改良されうまれたもの

・真の保護とは自然と関連した作物の個性を知りながらする保護である。結果、無肥料無農薬栽培になっていく。

・現在の生産消費システムは悪循環を生んでいる。

・工業化する→品質低下→価値減少→大量生産のために労働が増える→工業化する

 


4のまとめ

部分的で分析細分化した偏りがある前時代的自然科学的な視野ではなく全体論的な捉え方が必要。また、現代の悪循環を生む社会システムに囚われることなく、作物と自然と栽培の実際を意識した生産を行うべき。

 


1

・作物を主体にした栽培管理を意識する。

2

・現在は都市機構や経済主体で農業は動かされている。

3

・作物の旬を知り、それに合わせて仕事をする。

・管理農業により農家は追い詰められている。

・自然は曲線でできている。

・窪地は細い立性葉、高地は広葉、中間は切れ込みなどある複雑な葉。など植物の形質と適地を考える。

4

・人が土を作るのではなく野菜が土を作る。

・野菜は生きていくため土地柄に合わせた体の仕組みを作っている。その特性をつかまないと能力を発揮させる栽培はできない。

5

・暖冬で野菜の価格が暴落するのは、暖冬という天候のせいではなく商品生産化というシステムのせいである。

・雨水による土壌管理は人工灌水とは違い土壌と耕地の生態系を守る絶妙なものである。

・植物は雨により、葉からアルカリ溶液を出し、根から出る有機酸を中和し土壌を中性に保つ働きをもつ。

6

・適地は10年毎に移動すると言われていたが、単作化、大規模化によりそれができなくなった。

・工業化、単作化により自然に沿った農業ができなくなり、農家自身もより忙しく、より貧しくなった。

7

・これまでのまとめ

 


1

・今の栽培学は個を無視したものであり議論の混迷を生むものである。

・個体に着目していく。

2

・既存の概念は簡単に人の都合で言葉を使いすぎている。実際はもっと複雑なものである。

・作物の個性は外的現象と内的現象がある。

・内外現象は種を維持する個の対処であり、それが作物の個性を考える土台となる。

3

・自然間引きの考え方について

・少ない大きい個体と多い小さい個体

4

・実践を忘れ理論概念にとらわれてはいけない。

5

・植物の群体について。

6

・生活に役立つ優良品種は金のためのものにすりかわった。

・経済重視により本来的な農業のあり方が失われている側面がある。

・生活に根差した品種改良が望ましい。

 


まとめ

目の前の経済、現在の刹那的科学理論盲信の知識、農薬化学肥料ありきの農業技術、そのようなものにとらわれた農業ではなく、生活に根差した農業にシフトすべきだと感じた。

 栽培学批判序説 (人間選書)

栽培学批判序説 (人間選書)

  • 作者:藤井平司
  • 発売日: 2003/03/01
  • メディア: 単行本