kazki//okadaの備忘録

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「NHKにようこそ!」滝本竜彦/大岩ケンヂ

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全8巻。ひきこもりの主人公が1人の少女と出会い成長(?)していく物語。アニメ化もしているが漫画の方と内容は結構違う。漫画の方が攻めた内容。アニメの方が盛り上がりやすくわかりやすいが、主人公のダメさ、話の救いのなさ、重みなどは漫画の方に軍配が上がる。どちらもすごくいいけど。

人間の弱さ、愚かさ、切なさ等と同居する面白さや愛おしさ、光が見えない所で不意に輝く世界の美しさなど、個人的にすごく胸にくる描写が多い。ギャグ漫画としても素晴らしい。ヒロインが大切なものを作り、それを自ら手放すことで強くなろうとする、けど結局失敗する、という部分すごく好き。極限状態ではないけど現代日本における生温い底辺の描写、あったかい泥に浸かるような心地よさがある。社会的ドロップアウトを夢想すると何故か心が温まる。さまざまな執着に心を燃やされているからかもしれない。失うということは切なさを伴うが、もう失わなくて済むという安堵感が湧いてくる。そういった心地よさや諦念のような心の平穏を与えてくれる良作。渦中にいればそうも言ってられないかもしれないけど、ある種の安らぎは得られると思う。自分も病状が酷かった時、もう普通に生きられないかもと本気で思っていた。なんとかしようともがいている時は本当に辛かったけど、もう無理だなと諦めた時、安堵感があったし、ある種の安らぎがあった。太陽が出てるだけで泣きそうになる程美しいと思ったし気分がよかった。桜が咲いてるだけで嬉しかった。川が流れているのをみて心が洗われた。この作品を読むとその時の感覚がなんとなく甦る。なくしちゃいけない感覚。こういう作品は自分にとってエンターテイメントというだけでなく自分を見直すための教科書のようなものとも言える。今回の文章はもはやレビューではないですね。ごめんなさい。いろんなヒントが詰まってる素晴らしい漫画ですのでぜひ読んでみてください。あとヒロインがすごくいい。