kazki//okadaの備忘録

kazki//okadaの個人的な見解やレビューなどを垂れ流します。

「BLUE GIANT」立川譲

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ジャズ漫画原作のアニメ映画。音楽はジャズピアニスト上原ひろみが担当。

 

先に原作を読んでいたけど、映画としていい作品になっていてすごくよかった。

音楽映画としても青春映画としてもジャズ映画としても個人的に楽しめた。

普通にかなり熱い気持ちになれたしギター弾きたくなった。

ライブの曲や演奏も良かったし、演奏の描写も気合入っててよかった。ライブシーンがCG(?)なしの方が個人的にはよかったけど、それを置いといてもおおーと熱い気持ちになれた。

原作をうまく映画に収めていて上手だと思った。最初の方は直接描写されてないけどちゃんと組み込まれていて映画としての盛り上がりと原作のストーリーの尊重、両立できているような気がした。

 

音楽を全力でやること、がむしゃらに向き合う姿勢、見失ってる部分があったかもと思わされた。毎日練習してるし、曲も作り続けているけど、ダッシュするような気持ちや焦燥感みたいのが足りなかったかもしれない。焦燥感でたくさん失敗してきたので焦燥感にのまれてはいけないけど。

 

今見れてよかった。改めて頑張ろう。

「less」deathcrash

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ロンドンのスロウコアバンドdeathcrashのアルバム。

スロウコアらしいゆっくりと音が絡み合うようなフレーズと浮遊感のある歌。滲むような深い歪みと嘆くような叫び。朝聴いても昼聴いても夜聴いても落ち着けるし音もかっこいいバンド。

sunn o)))とか聴いても思うけどコードをかき鳴らすだけですごくいいと思えるのいいなと思う。滲むような深み。

白昼夢のような、昼の寂れたニュータウンのような、誰もいない砂浜のような、そんな雰囲気、もしかしたら夜の闇より好きかもしれない。

他のアルバムもいろいろ聴きたい。

 

https://music.apple.com/jp/album/less/1675548493

 

「仏教の大意」鈴木大拙

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日本の仏教学者、鈴木大拙の本。禅を中心に仏教のエッセンスが語られた本。入門書のような雰囲気もあるけど決してそうではない。いきなりこれを読んで理解できる人は多くはないと思う。

仏教、禅における非常に重要な部分が説明されているように思える。しかし、自分は勉強不足が故に理解が追いつかない部分が多い。ただ全く理解できなものだなというものではなく、勉強すれば理解できる部分は出てくるはずだと感じた。

AはAでありAではない、というと一見めちゃくちゃなことを言っているように思われるが、事象によっては当たり前のことだったりする。あまりいい例えは浮かばないが試みる。例えば、海は海であるが海ではない、とただ言われると意味不明である。しかし、コップに掬った海の水を見せられ、海(の水)は海(の一部分という意味では)であるが海(全体として捉えた時の海)ではない、と言われるとなんとなく言わんとしてることがわかる気がする。取り扱うことが、言語化に適さないことだとしたらこれ以上に理解している人には当たり前のことでも理解していないと意味不明または矛盾した内容になってくると思われる。そういう意味でも勉強すればわかるように、または体験すればわかるようになるかもしれないと読んでいて感じた。

我は我であり我ではない、ということや、個は全であり、全は個である、などということも、ある境地までいけば当たり前のことになるのだと思う。

一即全(一は全である)、自即他など西田幾多郎のベースに禅があることも感じられた。

我としての自己を離れることで、より大きい自己を自覚することができるというニュアンスは禅からきているという風に強く感じた。

深く考察せず読んでしまったので正直掴みきれていないが個人的に吸い取ったものとしては、

 

二元対立から離れる

個としての狭い自我を離れる

分別差別から離れる

 

ここに大切なものがあると感じた。

もう少し勉強してから改めて読み返す必要があると感じた。

「グスコーブドリの伝記」杉井ギサブロー

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宮沢賢治原作の物語をアニメ化した映画。アニメ銀河鉄道の夜の監督、杉井ギサブロー監督の作品。

まずアニメ銀河鉄道の夜がすごくいい。画面が暗く、話も仄暗く、音楽も素晴らしい。音楽制作ははっぴぃえんど、YMOなどの細野晴臣が担当。1985年の作品にも関わらず古臭さを感じさせない。

本作はデザインも含め、その流れをしっかり汲んだ作品。登場人物を猫にすることでシリアスすぎない雰囲気にしているように思われる。内容的にリアルな人間でやったらかなり暗いかもしれない。

特筆すべきは映像の美しさ。画素数などの話ではなく描写的な意味で。神秘的なシーンや牧歌的なシーン、どこをみても大変素晴らしい。夜、寝る前に暗い部屋で見るととてもいい。

ストーリーもいいのだけど、最後は急に終わるような印象。これから盛り上がってくるのか?という雰囲気の中、あれ?急に終わった!と少し驚いた。原作を読んでないので推測になるがおそらく映像化が非常に難しい作品なのではないかと思われる。原作を読んでみたいという気持ちが非常に強くなった。というより購入して読んでみようと思う。

主演声優は俳優の小栗旬。あえてなのか図らずもかわからないが割と特殊な演技になっている。棒読みとか下手というわけではないのだけど何故か感情を非常に感じさせない。主人公のキャラクターを描写する上であえてそのような演技指導をしているのか、意図せずそうなってしまったのか、見ていてもわからない不思議な雰囲気。そのため主人公が何があってもあまり感情が動かない少し狂気を帯びたような印象を放っている。ストーリーの展開的にも、そうだとしてもおかしくはないのでどちらなのか本当にわからない。悲しい出来事のために感情の働きが少し壊れてしまっているという描写だとしたらかなりすごい演技。そしてそれが作品の不気味さや異様な雰囲気をより強くしている。それが魅力にしっかりつながっているのも素晴らしい。反対に、単純に感情の動きを表現できてなかったとしたらかなり物語の雰囲気を変えてしまっているかもしれない。ものすごく素直で熱く優しい主人公が、冷静でほんのりサイコパス感のある狂気を帯びたキャラクターに変わってしまっているというのはいいことではないかもしれない。個人的には独特の魅力が出来上がっているので意図してでも事故でもこの出来でよかったと思う。

終わり方と主人公の解釈など見方によっては少し否定的な雰囲気の評価もしているかもしれないけど総じてすごく好みの作品。夜寝る前に観るのが特におすすめ。本当に素敵な作品ですので暗くしてみてみてほしい。

「NEW ROMANCER2」理芽

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日本のバーチャルシンガー理芽の2ndアルバム。主に日本のアーティスト笹川真生が楽曲制作をしている。

 

聴くきっかけは家で流れていた映画のエンディングの曲がよかったから。なんかいい曲流れているなと思い、なんですか?と聞いたら笹川さんが曲作っているというのを知りアルバムも聴いてみようと思った。

えろいむ、という曲がけっこうアレンジやメロディが尖っていて好きだなと思いアルバム通して聴いたのだけど、アルバム全体がその曲ぐらい尖っているわけではなかった。

尖っているかは別として笹川さんの色がとても強い。少し意識すると脳内で笹川さんの声で再生されるくらいには色が滲んでいる。歌い方の質感は結構違うので笹川さんが好きならおすすめともいいきれない。メロディの質感は笹川さんの雰囲気がある気がする。しっかり。

アレンジは全体的にとてもいい。ギターの存在感が結構強くてギター弾きやバンドマンも意識して聴いてみるとけっこう面白いと思う。シンセの使い方もまとまりつつ割と印象的なフレーズがあったり面白い。

特にアレンジにおいてバンドという枠にとらわれすぎないためにもいろいろ吸収したいなと思った。

https://music.apple.com/jp/album/new-romancer2/1719622052

 

「infra」マックス・リヒター

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ドイツ生まれイギリス育ちの現代音楽家マックス・リヒターのアルバム。

ピアノ、ストリングス、シンセサイザーなどを駆使したポストクラシカル。

 

非常に美しい音源。飛び抜けて特殊な何かを表現しづらいけれど、スタンダードな音色やメロディはとても美しく、シンセサイザーの類の音はどれもとても美しい洗練されている。そして非常にマイナスポイントが少ない。嫌な何かが本当にない。アンビエントミュージックとして素晴らしいし気をつけて聴くと音色の素晴らしさに心を奪われる。

アルバム全体を通してなんとなくグルーミーな雰囲気、切なさが漂っている。そこがまたとても好み。絵画でいうと少しウィリアム・ターナーのような雰囲気がある。

イギリスで育っていることと関係があるのだろうか。

ポストクラシカルの中でも五本の指に入るのでは?と思うほど気に入ったのに、うまく特徴つける言葉が見つからない。強いて言えば無理なキャラ付けをしなくても魅力的なのが特徴なのかもしれない。

作業中や曇りの日にゆっくり聴くと最高。

https://music.apple.com/jp/album/infra/1440753701

 

「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」満仲勧

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ジャンプで連載中のバレーボールのスポーツ漫画ハイキューの劇場版アニメ映画。

制作は攻殻機動隊PSYCHO-PASSなどを制作したproduction I.G

内容としてはアニメシリーズの続きの話を描いたもの。映画として単体で観ると全然良さがわからないと思う。あくまでもアニメシリーズを全て見た上で観るものだと思う。あらすじがあったらスピンオフ的な作品ではなくストーリーの本筋。

レビューとしてもこの映画単体というよりはハイキューシリーズの一部としてレビューするような形にはならざるを得ない。

まずハイキューという作品は割と王道のジャンプのスポーツ漫画なのだけどストーリーが普通に面白い。初めて観た時、というか勧められて観る前の印象としては、よくあるスポーツ漫画なんだろうなと全然期待していなかったのだけどとても面白かった。ジャンプでスポーツ漫画といえばスラムダンクの印象があって、ジェネリックスラムダンク的な感じだろうと思っていたけど観てみたら個人的にスラムダンクより好みかもしれない。スポーツ漫画なのでこれまでの作品を彷彿とさせるような部分はあるとは思うけど普通に熱い気持ちになれる王道ジャンプスポーツ漫画だなと思った。

やり尽くされた王道漫画で面白いと思わせるのは本当にすごいと思う。みたことない設定とかぶっ飛んでる作品とかもすごいのだけど目新しい何かじゃないのに面白いのってものすごい力がないと作れない気がする。みたことないものやぶっ飛んでるものを作るのも本当にすごいのだけど。

本作もストーリーは本筋上にあるので面白かった。内容は因縁のひと試合を映画一本で描いたものなのだけど熱い話だった。子供みたいな感想だけど改めて全力で何かやるのっていいなと思えた。体力的に限界を感じる何かをやりたいなという気持ちになれた。

テレビシリーズからそうだったのだけど作画や演出も素晴らしくとても楽しめた。技巧に溺れる感じがなく純粋にいいところでいい技が光るという感じで個人的にいいなと思った。

とても熱い気持ちになれたので少し忙しくて疲れていたけど少しばかり無理して観に行ってよかったなと思えた。

身体的に追い込むような何かをやることで改めてギリギリの状態でしか体験できない楽しい感覚を味わいたいと思った。夏の沖縄でハードコアバンドのコピーバンドでライブした時に感じた限界ゆえに思考を超えたような状態に入るあの感覚に近いもの。身体に引っ張られて精神が活性化、新たなステージに向かうことはよくあることだと思う。