kazki//okadaの備忘録

kazki//okadaの個人的な見解やレビューなどを垂れ流します。

「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章」黒川智之

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浅野いにお原作のSF漫画デッドデッドデーモンズデデデデデストラクションのアニメ映画。

アニメーションディレクター(おそらく監督)は黒川智之。監督ではなくアニメーションディレクターとあるのでアニメーション部分以外の監督作業は別の方がしているのでしょうか。他の監督作品は知らない作品でした。

制作はProduction +h.という新しめの会社。

 

予告編から思っていたけど、気合の入った作品だなと感じた。アニメーションもトータルのデザインもすごくいい。特に背景に感心した。浅野いにお感がある細かい背景が映画の中でも見ることができた。デザイン的に動かすのも難しそうなのに見てて、現実に引き戻されるような感覚はなかった。

構成など大胆に原作から変えてあったけど個人的によくできているなと感心したし引き込まれた。盛り上がりの作り方もうまいし原作を先に読んでいたけどとても楽しめたし、場所によっては原作以上に感情に訴えかけてくる部分もあった。どちらかというと原作改変に否定的な自分がこう思うというのは結構上手いことやったのではないかなと思った。よくまとまってるし単純に作品としてすごく面白いと思った。

漫画を読むのが好きになったきっかけは浅野いにおさんの作品だったらというのを観終わった後、思い出した。

原体験やルーツというと言い過ぎだけど自分の音楽の創作部分に大きく影響を与えている作家さんだったということを数年ぶり、下手したら十数年ぶりに思い出した。

矛盾する表現だけどポップなサブカルチャーと言いたくなるようなキャッチーさとアンダーグラウンド感(本当の意味でのアンダーグラウンドではなく2000年代後半あたりに芽吹いていたようなアングラ感)。適度なアンニュイさと絶望感。振りすぎない自己陶酔と照れ隠しと几帳面さ。原作がもつ雰囲気を映画からも感じることができた。エモ感とポップ感がブーストしてあった気はしますがそれはそれで好みだった。

原作者の浅野いにおさんは作画修正に入ったりと思うところがある作品なのかもしれないけど素晴らしい映画化だと思ったし、後編がすごく楽しみ。

神経の奥に刻まれたもののせいかもしれないけど滾る感じと改めて自分の創作のあり方について原点回帰というかルーツに向き合うきっかけをくれるいい作品だった。

タレント声優の起用は基本的にかなり好きじゃないのだけど今作においては全然マイナスになっていなかったのでとても良かった。声だけ浮いてるかもと思う瞬間はあったけどほとんど気にならなかったし、なんならちゃんとキャラクターとマッチしてるなと思った。

個人的に主人公の門出ちゃんのデザインがとても好き。キャラクターとしてもいい。

日常パートの友情描写、SFパートのディストピア感、メランコリーな展開、シュールすぎないギャグの雰囲気、どれをとっても自分によく馴染むものでここのところみた映画の中でもトップクラスに好きな作品だった。ぱっと思い出す限り一番面白かったかも。

まだやってると思うので気になる方は観てみてください。

「twilight」boa

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イギリスのロックバンドboaのアルバム。日本で活躍した韓国出身のシンガーとは無関係。

 

不思議な雰囲気の女性ボーカルはサロンミュージックに近い雰囲気もありつつビョークに近い何かがある気もするけど、それとも違う。

なんとなくイギリスと聞くと納得するような曲と歌。少しグルーミーですこし捻ってある感じ。UKロック、という感じとも違うけど。

 

アレンジもうるさすぎず、おとなしすぎず渋くてかっこいいし、メロディも複雑で素敵な印象。独特の妖艶さというか。

アニメ作品「serial experiments lain」というかなりアンダーグラウンド感が強い作品のオープンテーマである一曲目はかなり前から知っていていいなと思っていたのだけど、最近リリースされたシングルをたまたま聴く機会があり、とてもよかったから全部いいかもしれないと思いアルバムを聴いてみた。

まっすぐでパワフルなロックを聴きたいという人には合わないかもしれないけど、少し捻ったグルーミーな楽曲が好きなひとにはがっつりおすすめしたいです!

「moonyean」Loren Connors

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エクスペリメンタル、アンビエントのギタリストLoren Connorsの音源。

 

ギターのインストアルバム。相変わらず音もメロディもいい。このアルバムは握力というか有機的な力が音から感じられる。懐かしい暗さがあるメロディと輪郭があるのに滲みを感じる不思議な音。日本の琴や三味線に通ずる何かもある気がするけど音の運びのせいだろうか?しっかり歪んだ音色も素晴らしい。

初めて聴いたアルバムでこれは素晴らしい!となったけど本作もやはり素晴らしい。まだ2枚しか聴いてないけどLoren Connorsの音に通る筋のようなものを感じる。

 

引き続きいろいろ聴きたいギタリスト。身体に染み込ませて、自分も暗い和室のような音を出せるようになりたい。聴くだけでなく弾きこまなきゃそうはならないけど。

https://music.apple.com/jp/album/moonyean/809904261

「酔いとゆくすえ」夜の羊雲/酒村ゆっけ

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上下巻。酒村ゆっけさん原作の夜の羊雲さん作品。

 

ちょっと仄暗い雰囲気が漂う不思議なショートストーリーを集めた短編集。

夜の羊雲さんの絵がふわふわしてて可愛い感じかつアンニュイな感じがして好き。

他の作品を読んで知っていたので気になって購入。

巻数も少なく短編集なのでとても読みやすい。重すぎない仄暗さがゆるい気持ちで読めていい。

 

話もなかなか面白い。エネルギーをぶつけられすぎない感じがいい。ただ帯の煽り文句に「陶酔と衝撃のラスト」は個人的にはない方がいいかもと思った。ラストが弱いわけではないけど、その煽り文句と合わせるとなんとなく違和感があったりする。印象としてはもっと仄暗く生ぬるい良さがあると思う。大きい音を出さないお化けのような。どうでしょ?暗いでしょ?とか、意外だったでしょ?びっくりしたでしょ?という雰囲気を感じさせてしまう作品(こっちが勝手に感じてるだけ)が個人的に好みではないので、そのような解釈で本作をみると少し物足らないような感覚になるかも。

そうではなくてもっと生ぬるくほろ苦い少しとろみがある飲み物という感じのニュアンスで楽しむと更に良さを感じると思う。余計なお世話だとは思いますが。

 

煽り文句について無駄に言及してしまいましたが普通におすすめできる作品です。

そしてやはり特に夜の羊雲さんの絵柄いいなぁと思いました。

 

「shaman's daughter」死んだ僕の彼女

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日本のシューゲイザー、ドリームポップバンド死んだ僕の彼女のアルバム。シューゲイザーの中でもジャパニーズオルタナ感が強い。

ゴリゴリにエフェクティブというより空間系エフェクトがかかった滲むような歪みと浮遊間のある男女混合ボーカルが印象的。

なんとなくスーパーカーを思い出させる部分もあるけど、もっとアンニュイで滲んでいるイメージ。

シューゲイザー的なバンドのサウンドって割と春に合う気がする。

 

https://music.apple.com/jp/album/shamans-daughter-ep/1543850492

「BLUE GIANT」立川譲

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ジャズ漫画原作のアニメ映画。音楽はジャズピアニスト上原ひろみが担当。

 

先に原作を読んでいたけど、映画としていい作品になっていてすごくよかった。

音楽映画としても青春映画としてもジャズ映画としても個人的に楽しめた。

普通にかなり熱い気持ちになれたしギター弾きたくなった。

ライブの曲や演奏も良かったし、演奏の描写も気合入っててよかった。ライブシーンがCG(?)なしの方が個人的にはよかったけど、それを置いといてもおおーと熱い気持ちになれた。

原作をうまく映画に収めていて上手だと思った。最初の方は直接描写されてないけどちゃんと組み込まれていて映画としての盛り上がりと原作のストーリーの尊重、両立できているような気がした。

 

音楽を全力でやること、がむしゃらに向き合う姿勢、見失ってる部分があったかもと思わされた。毎日練習してるし、曲も作り続けているけど、ダッシュするような気持ちや焦燥感みたいのが足りなかったかもしれない。焦燥感でたくさん失敗してきたので焦燥感にのまれてはいけないけど。

 

今見れてよかった。改めて頑張ろう。

「less」deathcrash

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ロンドンのスロウコアバンドdeathcrashのアルバム。

スロウコアらしいゆっくりと音が絡み合うようなフレーズと浮遊感のある歌。滲むような深い歪みと嘆くような叫び。朝聴いても昼聴いても夜聴いても落ち着けるし音もかっこいいバンド。

sunn o)))とか聴いても思うけどコードをかき鳴らすだけですごくいいと思えるのいいなと思う。滲むような深み。

白昼夢のような、昼の寂れたニュータウンのような、誰もいない砂浜のような、そんな雰囲気、もしかしたら夜の闇より好きかもしれない。

他のアルバムもいろいろ聴きたい。

 

https://music.apple.com/jp/album/less/1675548493