「ぐうたら農法」西村和雄
草生栽培、不耕起栽培、低投与型有機栽培をバランスよく使った"ぐうたら農法"についての本。ぐうたら農法とあるが、農薬や化学肥料に頼った現代の農業より圧倒的に手間暇がかかる。これは楽をするための農法ではなく、自然と共生し安心安全な美味しい野菜を栽培するための農法である。自然の力を使い、化学肥料や畜糞に頼らず野菜を作る方法について写真や図を交えて説明されている。家庭菜園での栽培が想定されているので規模が大きくなった場合、実践できるか熟考は必要であるが、使える部分は沢山ある。
以下、細かい内容に関するメモ。
はじめに
ぐうたら農法→不耕起栽培(その中でも部分耕栽培)、草生栽培(雑草は刈るだけで抜いたり枯らしたりしない)、間作混作により、土中の動物や微生物、草に住む益虫などを活かす農法。土壌改良、病気の減少、連作障害の防止、害虫の防除が期待される。
パート1
・雑草を抜かないことで自然に近い環境になり連作障害が出なくなる。これは生物相が単純化し土壌生物のバランスが崩れないためと思われる。また、土壌有機物(草の根など)、土壌微生物、土壌動物(主にミミズやヤスデなど)が豊かになることで肥沃な土壌となる。
・病害虫が出る原因として生物相の単純化が考えられる。また、化学肥料の使用はもちろん、養分の強い堆肥の過剰な使用も病害虫を招くのみならず、メタボ野菜(養分を取りすぎて美味しくない野菜)を産む。単純化を避けるには、雑草は抜かず混作間作を取り入れるのがよい。
・いい土は団粒構造をもつ。大小の土の団子や植物の根が土に含まれているかを判断基準にする。団粒構造をもつと、水はけ、通気性、適度な保水性、養分を保つ性質などが上がる。
・畝立ては5年に一度ほど。土壌構造を崩さないため基本的には不耕起で栽培部のみ部分耕。それにより、いい土壌構造を保つ。不耕起により野菜や雑草の根が残り土壌生物のエサになる。耕すと、土が単純化し雨で土が締まりやすくなるし、硬盤ができやすい。
・雑草はいい状態を保つため株元から5センチを刈る。草食動物の食べる高さをはヒントに考えたもの。
刈った雑草を敷き詰める'草マルチ'は、保湿、地温の安定、泥の流出防止、土壌生物の活性化、雑草を蔓延らせないなどの効果がある。団粒構造、小動物、放線菌などが見られればいい土壌になっている証拠。
・雑草は蔓延らせない、数年経ったら草の根は切る、肥沃な土地はモグラが寄ってくるので残渣置きをモグラ寄せに使う、これらのことを実践すべし。
・間作混作を効果的にする。トマトと大豆、ナス科とネギ類、ナス科とウリ科、葉物のやんちゃまき(複数のタネを混ぜてまくと単一で育てるより生長がはやい)など効果的に栽培する。
・土壌改良はマメ科とイネ科の緑肥作物栽培で一年でできる。緑肥作物だけでなく枝豆なども効果的。また、肥沃な土地から四角い空き缶(煎餅とかの)で土をもらい畑の中心に埋めると微生物がそこから拡がる。
・少ない肥料で育てたいい野菜は、保存性、食味がよく、腐らず萎む。葉はシンメトリーになり淡い色をする。少肥にすることで根が積極的に栄養を吸収するので、ヒゲ根がびっしりの野菜になる。
パート2
・野菜は旬に合わせて作るのがよい。
・畝作りは、水はけにより高さを決める。水はけが悪いなら高くする必要がある。
用途に応じて山畝か平畝か決める。山は1列用で収穫しやすく、平は混作などに向いている。しかし平は労力はかかる。
方角として基本的には南北に立てるのがセオリー。全ての野菜に日が当たるよう意識する。
・畝の高さは5〜20cm目安、幅は60cm、通路は40cmがおすすめ。通路が狭いと野菜同士があたったり、根が伸び伸び育たなかったりする。細かい畝立ての方法は本書の写真(p46〜47)参考に。
・元肥は広く薄く土に混ぜる。溝施肥も効果が持続するのでよい。追肥は葉色をみて少量ずつこまめに広く薄く土に混ぜる。葉が黄色っぽかったり小さかったりしたら追肥のタイミング。
・ボカシ肥料は追肥に適した肥料。元肥にも使える。作り方は本書p50〜53参照。
・種蒔きは草を削って蒔いて土を被せて鎮圧し草をまた被せる。作物によってスジまき、点まき、バラまきを使い分ける。
・発芽を促す方法として不織布や新聞、もみ殻などをかぶせる。細かい品目ごとの方法は本書のp57参照。
・苗植えは雨の2、3日前、または雨の前日にする。風のない曇天がよい。植え付け前に十分に根を濡らす。元肥施肥後二、三週間で苗植えをする。植えた後は仮支柱、あんどん、トンネルなどで対策をとる。
・植え付け後、こまめに草を刈り敷く。品目により支柱を立てる、ネットを張るなど作業を行う。また、間引き、追肥、誘引、わき芽かき、摘芯、中耕、土寄せなど行う。
・草マルチ作りでは雑草と合わせて栽培した緑肥作物を利用する。晩秋まきのヘアリーベッチやライ麦など通路や畝に刈り敷くと土壌改良効果がある。
・収穫は特別なことはしない。片付けにおいては収穫残渣を畑の土に戻す。根は抜かず地際で刈りそのままにする。邪魔にならないところに残渣を積み上げるとモグラをそこに集め畑から遠ざけることができる。
・病害虫は見つけ次第対策をとる。病は切り取り畑外へ、害虫は捕殺する。各々の対策は本書p67参照。
・コンパニオンプランツを活用する。組み合わせは本書または書籍参照。
まとめ
・草生栽培は地主および近隣の理解が必要だと思われる。また、家庭菜園ではなく仕事としての農業で管理しきれるか熟考が必要である。
・畝立ては写真通りでなく、農機具を使って同じことができるなら、それでも問題ない。
・本書にて実践されている方法は家庭菜園での栽培が想定されている。規模を広げても可能か熟考が必要である。また可能でないにしろ活用できる部分はたくさんあると思うのでそこを改めて考える必要がある。
- 作者: 西村和雄
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