kazki//okadaの備忘録

kazki//okadaの個人的な見解やレビューなどを垂れ流します。

「モテないのではないモテたくないのだ!!」カラスヤサトシ

f:id:kazki_okada:20210302075722j:image

エッセイ漫画家カラスヤサトシさんの半フィクションの作品。冴えない男子中学生の恋愛観についての作品。混沌とした恋愛の喧騒から一歩引いた生き方をしようとしつつ抗いきれず飲み込まれている教室における下層階級男子の思考をカラスヤサトシさんのテイストで描いた作品。思春期の女子に振り回されるというか勝手に振りまわるというか、そういう感じをうまく描いている。所々にノスタルジーをくすぐる描写が散りばめられており、それがさらに思春期のあの感じを思い起こさせる。青春時代に戻りたいだとか子供の頃は楽しかったなんて表現があるけど、自分は絶対に嫌だ。いじめられてたとか暗い過去は一切ない。けど日々綱渡りのような世界で底抜けのアホだった自分には戻りたいと思えない。思うわけがない。そのような世界が描かれていて胸にグッとくる瞬間がある。絶対戻りたくないけどあの日々のおかげで今の生活があると思う。あれがなきゃ未だに自らの愚かさで苦しみ続ける真綿のような地獄がずっとつづいていたとおもう。過去の屍に感謝。最後に卒業のシーンがあるのだけど、個人の中にほのかに湧き上がるドラマチックが凄くいい。そして、実際にはドラマチックとは程遠い冴えないエンディングという現実がリアリティに溢れていてすごくいい。メタ的な視点で生きる面白さを教えてくれる。切れ味が鋭いわけじゃないのに大事なとこしっかり押さえてるカラスヤさんの作品、すごく好きです。

巻末あたりについてる福満しげゆきさんとの対談も面白い。けど、福満さんがどんな漫画家さんか知らないとよくわからないかも。