kazki//okadaの備忘録

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「NEW GAME」得能正太郎

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全13巻。発売当時に家人がジャケ買いしたのがきっかけで知った作品。

表紙を見て絵はかわいいけど中身スカスカの萌え作品なんだろうなと思っていた。しかし全然違った。全然違うというのもまた違うかもしれない。魔法少女まどかマギカのように実は陰鬱な作品でした、みたいなギャップがあるわけではない。たしかにキャラをがっつりおしているし(推す意味でも押す意味でも)、ストーリーとしてもかわいい要素はかなり多くを占めている。そういう意味ではサムネ詐欺的な表紙詐欺的なものはいい意味での裏切りも含め無いと言える。単純に内容がしっかり面白い。

クリエイターの仕事の描写、クリエイターとして働くことの大変さや面白さ、キャラクターのクリエイターとしての成長、職場における人間関係、かわいい女の子がただふわふわとゆるゆるの日常を送るだけの作品と一線を画している。

キャラクターや作画の方面でも中途半端ではないいい意味であざとすぎるセンスを発揮している。概念としての見たことないくらい多様性のある需要に応えているキャラクター群。自分の好みに偏るように見える作家さんが多いように思えるが見事に全方位に応えるような設定。さまざまな性的嗜好にも対応するようなやり方はあざとさを超えてもはや賞賛に値する。

しかし、このキャラクター設定、作画があってもストーリーが先に印象として残るあたり内容としてしっかりした作品なんだなと本当に感心する。テレビアニメ化も成功し画集までリリースされていることをみるとキャラクターのかわいさと内容の面白さの両輪でうまくいっているというのがわかる。

発売以来、ずっと最新刊を追ってきたのだけどついに最終回。自分もなにか卒業式のような喪失感と充実感と心地よい切なさのようなものを感じた。ただ読んだだけだけど。一巻が2014年なので7年間。時の流れを感じる。

個人的な話になるが、この作品は内容から全力で働くことの魅力と嗜好性を通して自分を見ることを教えてくれた。

わかりやすいキャラクターの多様性があるので、好印象をもったキャラクターについて何故いいと思ったか考えるといろいろ自分の好きなもの、好きな性格、自分自身何を投影してどう感じたかなど見えてくるものがある。例えば、共感する部分が、弱さや攻撃性、人見知り、反対に強さや冷静さ、積極性など、自分にないもの自分にあるもの、自分に欲しいもの自分の消したいものなどいろいろ見えてくると思う。本作はそこのところしっかりわかりやすい上に捨てキャラもおらず多様性もあるので、非常にいいと思う。かわいいなだけで終わらず自分を見るきっかけになると思う。個人的には画力のある高校の友人のキャラクターがすごくよかった。自身にないものがあったり、自分でも誇れる部分の共感だったりがあったんだと思うし、視覚的に好きな要素などあったんだと思う。いいな、から自分の要素を知ることができた。

あと全力で働くことの魅力についてだが、これも日々に活力を与え、今してることが本当にいいのかどうか問うきっかけにもなると思う。なんとなくで何十年も仕事するのはもったいない気もするので見直すきっかけとしてもいいと思う。ここで描かれているものはある種、理想であり、リアリティのあるものではないかもしれないが、重要なのは業界のリアルを描くことではなく抽象化された働くことについての描写だと思う。そこから頑張ろうという気持ちやこのままでいいのかという疑問、一歩踏み出そうという決意などそれぞれ得られるものがあると思う。

ひとつ要望を出すとすれば四コマ形式ではなく普通にコマ割りしてもよかったのでは?というのはある。一応四コマ目に若干のオチがありはするがそれぞれ全く独立しておらず普通のストーリーものとして進んでいくので四コマ形式ではなくしっかりコマ割りしてあるNEW GAMEも見てみたかった気はする。意味はあるとは思うけど何も知らない読者からすれば悪い解釈する人ならコマ割りさぼってる?なんて思うかもしれない。

表紙で敬遠する人もいるかも知れないが少年漫画的なワクワクも楽しめるし、かわいいも楽しめるし内容もしっかりあるすごくいい作品だと思う。7年間にわたり楽しませてくれた得能正太郎先生に心から感謝している。