kazki//okadaの備忘録

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「かくかくしかじか」東村アキコ

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全5巻。漫画家東村アキコさんの自伝的作品。東村さんと絵の先生を中心に話が展開する。エッセイコミックとして非常に素晴らしい作品。クリエイターとしてだけではなく人間として学びや共感がある作品。結局のところ自分で経験しないとわからないものがほとんどではあるけど学びや心構えやヒントは自伝的なものに芳醇に含まれている。本作は東村さんの反省や心残りが前を向きつつも存分に滲んでおり、それが共感と学び、または学んでもやはり活かせない部分がある、というのを教えてくれる。忙しさや現実に追われて、本当は重要なことを見ぬふりをすること、取り返しがつかなくなってから気付いて、または、気付いたふりをして、後悔すると同時に少し安心する感覚などを読んでいて感じた。いま会わないともう会えないとわかっていてもそれをわかっていないふりをしたり、大丈夫だと自分を騙したり、今もきっと似たようなことをやっていて、これからもやってしまう気がする。それは逃げでもあり、自分を守る方法でもあるし、正直、少し楽だったりもする。きっといつか精算しなくてはならない時が来るだろうとわかっているつもりでも、心の奥では、なんとなく過ぎていくだろうからやり過ごそうという姿勢がうごめいている。この作品を読んだことでなるべく誠実に世界の事象に向き合いたいと思うのだけど、やはり自分には少し難しいという気持ちもある。作品に昇華することによる懺悔。これは自己欺瞞に満ちているかもしれないけど結局いい結果を生むものだとも思う。きっと全然精神の構造やあり方が違うのだけど、勝手に東村さんに自己投影した上で自己肯定しているのかもしれない。あともし本当に自己欺瞞に満ちた懺悔、それでも前に進むしかないという覚悟の現れだとしたら、自分はこの作品および東村さんをすごく尊敬するし、自分もそうありたいと思う。そうありたいかはわからない。本当の理想ではないけど現実的で誠実さを保ったやり方だと思う。レビューとしては最悪の文章になってしまったけど、読んで感じたことをそのまま書くとこんな感じになる。この作品は考えるきっかけおよび思考の枠組みの一つをくれる素晴らしい作品だと思う。あと純粋に面白いのでおすすめ。