kazki//okadaの備忘録

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「A GOHST STORY」デヴィッド・ロウリー

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死んだ男が幽霊となり、世界に留まり眺め続ける映画。近年稀に見る好みの映画だった。布を被った幽霊という一見コミカルにも思える描写ではあるが内容はシリアスなヒューマンドラマという印象。ホラーではない。一瞬ホラーっぽい描写もあるけど、その描写すらホラーではなくヒューマンドラマな感じ。アンニュイな空気感がずっと保たれていて素晴らしい。空気を崩す出来事も描写もない。余計なものを落とした研ぎ澄まされた感じ。過剰な感情表現がないのも素晴らしい。どこか淡々とした印象がある。幽霊になったことがないからわからないけどなんだかリアリティを感じる。感情や目的だけが残った抜け殻というか、そんな感じが。途中の登場人物が語る音楽、芸術、存在に関する長台詞も好き。直球すぎる感じもあるかもしれないけど自分はそれくらいがわかりやすくて好き。また時間に関する描写もとてもおもしろい。死者の時間や円環的な時間描写がおもしろい。以前、何かで死ぬとあらゆる時間、空間の縛りから解放されるというような話を臨死体験者の話かなんかで聞いたことがあるけどそれを思い出した。数直線的な時間軸からずれたら円形、球形の時間描写が自分の感覚と近いものを感じたのですごく安心した。内容ではなく行為というものに執着する人間描写もよかった。一見、難解なストーリー展開だし、実際何を意図したかはっきり掴み取れてるかわからないけど、それでも何かわかりやすい作品だなと思った。余白が意外と狭い印象。そこも含めいいなと思った。勧めてくれた人に感謝。ありがとうございます。