kazki//okadaの備忘録

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「きつねのはなし」森見登美彦

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夜は短し歩けよ乙女、四畳半神話体系などで有名な森見登美彦さんの小説。表題作のほか三篇が入っている。それぞれ独立しているが共通の設定が所々見受けられゆるく繋がっている感じ。森見作品は愉快な作品が多い印象があったがこちらは仄暗い。かなり仄暗いという表現を使いたくなる雰囲気。深い暗さがあるのだけど闇とは違う薄くどこまでも続くような暗さ。化け物のでないジャパニーズホラーという印象。これが実に素晴らしい。数年前に読んだ夜行も暗い作品だったが、こちらの方が地味でありながら濃い不気味さを纏っていて素敵。どこかほっとするような陰鬱さで妙に湿気を帯びた表現が自分が好きな日本を感じさせる。日本のアーティスト、冥丁さんの音楽と共通点がある日本の湿気。じつに素晴らしい。ところどころ現代っぽい雰囲気を感じさせる部分もあるが全体の雰囲気、化け物が暴れすぎず存在を匂わせる程度であることも好ましい。これまで読んだ森見作品の中で一番好きな作品でした。

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