kazki//okadaの備忘録

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「グスコーブドリの伝記」杉井ギサブロー

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宮沢賢治原作の物語をアニメ化した映画。アニメ銀河鉄道の夜の監督、杉井ギサブロー監督の作品。

まずアニメ銀河鉄道の夜がすごくいい。画面が暗く、話も仄暗く、音楽も素晴らしい。音楽制作ははっぴぃえんど、YMOなどの細野晴臣が担当。1985年の作品にも関わらず古臭さを感じさせない。

本作はデザインも含め、その流れをしっかり汲んだ作品。登場人物を猫にすることでシリアスすぎない雰囲気にしているように思われる。内容的にリアルな人間でやったらかなり暗いかもしれない。

特筆すべきは映像の美しさ。画素数などの話ではなく描写的な意味で。神秘的なシーンや牧歌的なシーン、どこをみても大変素晴らしい。夜、寝る前に暗い部屋で見るととてもいい。

ストーリーもいいのだけど、最後は急に終わるような印象。これから盛り上がってくるのか?という雰囲気の中、あれ?急に終わった!と少し驚いた。原作を読んでないので推測になるがおそらく映像化が非常に難しい作品なのではないかと思われる。原作を読んでみたいという気持ちが非常に強くなった。というより購入して読んでみようと思う。

主演声優は俳優の小栗旬。あえてなのか図らずもかわからないが割と特殊な演技になっている。棒読みとか下手というわけではないのだけど何故か感情を非常に感じさせない。主人公のキャラクターを描写する上であえてそのような演技指導をしているのか、意図せずそうなってしまったのか、見ていてもわからない不思議な雰囲気。そのため主人公が何があってもあまり感情が動かない少し狂気を帯びたような印象を放っている。ストーリーの展開的にも、そうだとしてもおかしくはないのでどちらなのか本当にわからない。悲しい出来事のために感情の働きが少し壊れてしまっているという描写だとしたらかなりすごい演技。そしてそれが作品の不気味さや異様な雰囲気をより強くしている。それが魅力にしっかりつながっているのも素晴らしい。反対に、単純に感情の動きを表現できてなかったとしたらかなり物語の雰囲気を変えてしまっているかもしれない。ものすごく素直で熱く優しい主人公が、冷静でほんのりサイコパス感のある狂気を帯びたキャラクターに変わってしまっているというのはいいことではないかもしれない。個人的には独特の魅力が出来上がっているので意図してでも事故でもこの出来でよかったと思う。

終わり方と主人公の解釈など見方によっては少し否定的な雰囲気の評価もしているかもしれないけど総じてすごく好みの作品。夜寝る前に観るのが特におすすめ。本当に素敵な作品ですので暗くしてみてみてほしい。