kazki//okadaの備忘録

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「ふたりエスケープ」田口囁一

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全4巻。ロックバンドのボーカルであり漫画家である田口囁一さんの作品。

百合姫コミックスから出版されていて、なんとなく名前から百合もののエロ漫画か?と思う方もいるかもしれないけどそうではない。所謂百合要素はなくはないけど、ほんのり香る程度でそこにウェイトを置いているわけではないのでどんな人でも楽しんで読める作品。香る程度なのがむしろ微笑ましい雰囲気を生みつつ、可愛らしさをブーストしているのでフラットな雰囲気で非常によい。

作品の主題は、追い詰められている時の現実逃避の快感と有意義さ。と、勝手に感じている。主人公は漫画家の後輩と無職の先輩。締め切りに追われつつ日常を楽しむ(?)二人の物語。普通より忙しいながらも社会人的な時間の使い方に縛られず行動する描写が素晴らしい。夜の街や地方への突然の旅行、無駄で馬鹿馬鹿しいと思われるような買い物など胸に迫る懐かしさやグッとくる感じがある。田口囁一さんがバンドマンであることがもしかしたら関係してるかもしれない。ライブの後の打ち上げ、そのまま迎える朝日の退廃的な美しさと同じようなものをこの作品から感じることができる。台詞のワードチョイスも近い価値観というかいい感じに刺さってくる。主人公の2人がかわいいのがまたいいバランスを生んでいる。バンドマン2人とかだったら熱くなりすぎて気持ちよく読むことができなかったかもしれない。最初から最後まで盛り上がりすぎずマンネリしすぎるでもなくちょうどいい温度感がずっと続く。個人的にはぬるっともっと長く続いてくれたら嬉しかった。最後の方にこの作品の由来となるようなエピソードもあってまたぬるっとしたいい気分になった。最終巻の最後らへんの見開きは心が温まる優しい感動があった。涙が出るようなものでなく、少しぬるめの気持ちがいい風呂のような感動。すごくいいのだけど押し付けてこないような心地よい感動。感動なのかわからないけどすごくいい感じ。疲れてる人にすごいおすすめな作品。これを参考にふらっと休日を過ごすのもよいかもしれない。大学生〜大人のための休日の過ごし方指南者としてもすごくいいかもしれない。作品としてはひと段落だけどSNS等でゆるっと続きというか二人の物語を描いてくださるようなので自分もぬるっと追っていきたい。本当に細くでもいいので長く続けてもらえたら嬉しい限りである。