Jakob Broのライブ音源。ギター、ベース、ドラムのトリオ編成。アンビエントなギタージャズ。Jakob Broの魅力が以前聴いたスタジオ音源より更にわかりやすく伝わる最高の音源。曲も演奏も素晴らしい。音の運びも素晴らしく余計な音がない。意識にひっかかる音でありながら浮遊感のある音色でそれらを滲ませつつ広げている。久しぶりにグッとくるギタリストです。
「リング」中田秀夫
ジャパニーズホラーの傑作。そして、私のトラウマ作品。小学生の時に居間で母親が観ていて、チラッと見えた何かが本当に気持ち悪かった。絶対観ないと思っていたのですが家人が勝手に流したので一緒に見てしまった。嫌だなぁと思いながらも観てみると本当に素晴らしい作品だった。派手な演出も少なく画面の色合いも素敵。音もすごく好みだった。ジャンプスケアがほぼないのも個人的に好き。驚かせる演出は一時的にビビるけど、後味が薄っぺらに感じると同時に謎に腹が立ってくる。作り手のドヤァという感じを、それがあるかないか別にして、こちら側から勝手にみてしまう。それが無くじっとりとした陰鬱さで不気味さを描いているのが好きだった。竹内結子さんと真田広之さんが演じる人物が貞子さんに殺されるシーンの演出がちょっと安っぽい以外は実に素晴らしかった。
貞子さんという存在は本当に素敵。髪型、色合い、動き、すべての要素がオーソドックスでありながらその最高峰といった雰囲気。TVから出てくるのは気味が悪いので勘弁して欲しいですが。
余談ですが、リングより後に原作鈴木光司×監督中田秀夫のリングと同じタッグで作られた「仄暗い水の底から」という映画も昔観たのですが、こちらは序盤の雰囲気は割といいのですが、水がバッシャーってなったり、女の子のお化けがすごいパンチ力で給水タンク殴ったり、水を操ったりと結構笑いました。派手派手演出のホラーはビビるだけで腹が立ってくるか笑えるけど観終わったあとスカスカな気分になったり個人的に好きじゃないなぁと思いました。
「メイドインアビス-深き魂の黎明-」小島正幸
TVアニメシリーズ、メイドインアビスの劇場版。原作はつくしあきひと。かわいいポップな絵柄ではあるが公開前にpg12からr15になった割とエグみのある作品。といっても、グロには重きを置いていない。普通に内容が面白い。本作は映画ではありますが内容が本筋なので満足度がかなり高い。劇場版はスピンオフなどが多い中、素晴らしいと感じました。内容も作画も実に良かった。
ボンドルドという登場人物が魅力的で動揺しない心の素晴らしさを感じた。サイコパスな敵のキャラクターではありますが。常に冷静に肯定的に物事を捉える、といっても楽観的なわけではなく、現実に偏りのある価値判断を加えず肯定的に捉える。それはすごくいい姿勢だと思いました。単純に中二病心をくすぐるダサかっこいいデザインもいい。ポケモンのミュウツーやハンターハンターのメルエムなど太くて長いしっぽのついた二足歩行のデザインって好きかも。本質的な部分から離れてしまいましたが、一番学んだことは、やはり敵のその姿勢かもしれません。
あとは単純にエンターテインメントとしてすごく楽しかった。世界観、キャラクター、作画、戦闘シーン、諸々が単純に楽しかったです。原作及びTVシリーズを観てない人にはなにがなんだかわからないのでおすすめしません。あくまでもTVシリーズの続きです。
※劇場公開中。
「自由の哲学」ルドルフ・シュタイナー
ルドルフ・シュタイナーの自由についての書。やはり難しい。自由意志の問題、一元論の問題、思考や知覚の問題。シュタイナーを読むには哲学をある程度知ってなくてはいけないと感じた。素朴実在論→観念論→その先、という流れがあるとしたら、自分はその先を全く理解できていない気がする。いろいろと既存の枠組みを壊していってるのはわかるのだけど頭がついていかない。もっと勉強したうえで改めて読みたい。
- 作者:ルドルフ シュタイナー
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/07/01
- メディア: 文庫
「無[Ⅰ] 神の革命」福岡正信
自然農法家、福岡正信さんの思想書。農家の著作と思われるかと思うがしっかりとした思想家の著作である。
主張されていることを大きくまとめると、
・無知の自覚(人知の否定)
・分別及び価値判断の否定
・不可逆的文明の否定
である。
中でも分別及び価値判断の否定という思想がその中心を貫いている。
人知が有限であり、求めれば求めるほど遠ざかるということを具体的な例をあげわかりやすく述べている。そして、あらゆる価値判断が相対的であること、そして執着や贅沢が更なる渇きを生んでいることを根本に据えている。
現代社会が抱える渇きの原因がここにあることを様々な例からも示している。
少々偏りもあるが、不可知論や価値判断の問題などについて、大変わかりやすく書かれている名著であると言えるのではないだろうか。また本人が自然農法家として、その価値観に基づいた生活を実践していることも説得力に繋がっている。哲学者や高僧の議論に比べて甘さや偏りがあることは否めないが、実践が伴っているが故に強い説得力を持っている。
自分個人としても感銘を受けた。もともと抱いている思想と非常に近かったからかもしれないが。不可知、無知、主客の否定など、根底に仏教思想があることは間違い無いと思われる。
面白いと思ったのは、一農家の空いた時間で書いたものだと言いつつ、西田幾多郎や道元、西洋だとルドルフ・シュタイナーの思想と共通する点が多く見られることである。それぞれに仏教思想の影響が出た結果かもしれないけれど、思考のプロセスとして一般論→哲学的思考→宗教的思考(自分から見るとそう見える)という道筋を辿っているように思われる。自分も今以上に学び考え、その学び考えたプロセスを必要ではあったけど最終的には否定できるくらいの境地に達したいものである。がんばりませう。